奈辺書房

不確かなこと日記。

叶った夢の断片

いま、過去の自分にとっての夢が叶っていたことに気づいた。

 

過去の自分にとっての夢とは、「眠れない時は起きていても良い」生活をするということだ。

 

中学生の頃から僕は夜になると活発になる習性(下ネタではない)があるのだが、親からは23時を回ると「寝なさい」と言われた。部活からヘトヘトで帰ってきて18時頃に一度寝ていたから、23時なんてまったく眠くはならないのだ。それなのに「寝ろ」という外圧がかかる。親というのは頑固なもので「眠くない」と言っても、「布団に入れば眠くなる」とかふざけたことを抜かすのだ。これは僕にとって耐え難い苦痛だった。

 

仕方がないので布団に入るものの、当然眠くないので眠りにはつけない。ではどうするのかと言うと、まずはウォークマンでラジオを聴く(そこでSCHOOL OF LOCK!!と出会った)。目当ての番組が終わると今度は好きな音楽を無限に聴き続ける。するとアドレナリンが出てきて覚醒してくる。頭が冴えてくるので、哲学とか宇宙とか、今思えばただの妄想みたいな話ではあることを永遠に考え続けてみたりする。何かしたくてたまらない気分になるのだが、下手に家を動いてしまっては親の機嫌を損なうので良くない。

 

と言うことで、中学生の頃の僕は布団に入ってから5時間ほど無に等しい時間を過ごしていた。どうやら、僕と同じ経験をしている人は少ないようだったので本当に息苦しい世界だと思っていた。

 

この時から、「眠たくなければいつまでも起きていられるような生活をしたい」と強く願うようになっていた。東京の大学に行こうと思ったのも、そんな生活を実現させるために親元を離れて自由に暮らしたいから、以外の理由が見当たらなかった。正直、その頃は大学での勉学のモチベーションなんて微塵もなかった。

 

そんなこんなで、いま僕の夢は叶っている。眠たくないので朝まで起きていることもできる。夜は余りに静かなもので、作業に没頭できる(と言って、実はTwitterを眺めてるだけだったりするのだが)。

 

当然、生活リズムは乱れる。だから、講義に間に合わないことはしばしばあるし、こんな体たらくではシフト制のバイトなんかも長続きしないので、たまに駄文を売ったり写真を撮ったり企画を考えたりして露命を繋いでいる。

 

たしかに夢は叶ったはずなのだけれど、どうにも心から幸せだとは思えない。あの頃あんなに切望した暮らしが手に入ったのに。求めなければそこまで不自由な生活でもないのに。それなのに、どうしていつも何かが欠けている気がするのだろう。しかも、この感覚はどれだけ時間が経っても、どんなに欲しいものが手に入っても、好みの女と寝ても満たされない気がするのだ。

 

ギターが欲しくて欲しくて楽器店でレスポールを眺めていた時のこととか、塾のクラスに好きな人がいたけど話しかけたりなんてできなかった時のこととか、勉強の合間に観始めてから深夜アニメにハマったこと時のこととか、親と折り合いがつかずに悔しくてベッドの中で泣いていた時のこととか、思い出すと僕は何かを叶えたくて必死に生きていたんだなって思う。

 

今僕には新しい夢がある。でも、きっと夢を叶えることより大事なことがあるんじゃないかって、考え始めているところだ。それが何なのかはまだ判然としない。だが、必死に今と向き合うしかないんだってことだけはわかる。