奈辺書房

不確かなこと日記。

10/24の断片

人には、それぞれの地獄があるらしい。だとしても、他の人の地獄は、今自分の精神を蝕んでやまないこの感覚ほど苦しいものなのだろうか。人のことを信用できなくなったということを言う人は、それが非日常であるから言葉にだすのだと思う。そもそも他人を信用するという概念をもたない人は、他人を信用ができる/できないという判断に至らない。地獄も同じだ。地獄が日常ならわざわざ言葉にしたりはしない。

 

通勤する会社員を見て、この人達は今空が薄暗く曇っていることに思いを馳せたりするのだろうかと考える。目の前にいる主婦は、国際情勢のことを考えたりするのだろうか。きちんとヘルメッドを被って自転車に乗る男子高校生は、同年代の少年が起こした事故の背景について考えて、共感したりするのだろうか。今これを読んでいる人は、明日も世界がつづくことを悲観して嘆いたりするのだろうか。僕は、その一切を確かめようがない。

 

鏡を見たら、だらしない肉がこびり付き、眼の奥底から光が消え、不機嫌を表す顔文字があるならこんな感じなんだろうといった人間の顔があった。以前は鏡を見るとその歪んだ造形に愕然とするくらいだったが、今はそんな些細なことではなく佇まいからし終わった人間の感がある。