奈辺書房

不確かなこと日記。

消費の断片

磨り減ったスニーカーの底、残り2本になった煙草、購入したカメラは中古。

高額になった公共料金は、あまり外に出なかった証。それなのに、洗濯物は溜まる一方。

夢中になれた音楽は今や移動中に聴き流すだけ。ライブハウスに足を運ぶことも無くなった。活字は読む気になれず、読書家の気持ちなんてまるで理解できそうにない。観たかった映画は、いつの間にか公開を終えていた。

 

なにかになったフリ、なにかを好きになったフリ、誰かを思うフリばかりが中途半端に上手になった。

 

わけもわからず明るく振る舞うあいつが嫌いだった。持論を振りまくあいつはどうしようもなく痛く思えて、つらくて見ていられなくなった。海外から来たコンビニの店員は、いつの間にか日本語がうまくなっていた。その間僕は、なにかひとつでも前に進んだのだろうか。

 

1時間1000円で消費される日々が嫌になって、途中まで書いた履歴書はぐちゃぐちゃにして捨てた。はじめは丁寧にしていた連絡も今は返していない。

 

時代のせいにできたなら、いくらか楽になるだろうか。他人のせいにできたなら、すこしは自分を愛せただろうか。

 

抜け殻みたいな自分と地面に落ちる灰殻を見比べても、遠くから見れば何も変わらないかもしれない。

 

こんな僕だとしても、なにか残せたらいいな。いつか、消費を抜け出せたらいいな。