諦めの断片
チューニングの狂ったアコースティックギター、寝具のなかでひとつだけ柄が違うシーツの色はベージュ、環状八号線の通りは好きになれた。
必要なのに我慢していたものが、数え切れないほどあった。諦めちゃいけないものばかり諦めていたのは失った時の虚しさを知りたくなかったから。
辞書をひらけば、知らないことを知ったつもりになれた。何々のつもり、になるのが一番恐ろしいのは、もう本当のことを知ろうと思えなくなるから。諦め方ばかりが上手になるから。君が知らないことばかりで、この世界はきちんとできている。
終わるはずのなかった夢が終わったように、この喜怒哀楽も全部きちんと片付く。
嘘を吐くから、言葉なんていらない。言葉がいらなくなった世界のことを考えている。