「おすすめの本ある?」という質問、答えるの難しい説
「おすすめの本ある?」
最近、知人によくされる質問なのですが、これ簡単そうに見えて実は答える難易度が高い質問ランキング5位以内に入るのでは?と思ったのです。
と言うのも、本と言ってもジャンルは多岐にわたります。小説、エッセイ、実用書、専門書……。それに難易度も様々です。短編ひとつを取ったとしても、星新一のようにサクッと読めるショートショートがあれば、安部公房のように小難しい随筆もあります。
こんなに多く種類のある本の中から、「おすすめの本ある?」という質問に二つ返事で「これ!」と答えるのはなかなか難しいものです。
この質問に限った話ではありませんが、相手がどういう意図でその質問をしてきているのか的確に汲み取ったうえで紹介しなくては双方に深い遺恨が残ります。
例えば、「サクッと読める小説を知りたいな〜」と思ってる人が「おすすめの本ある?」と聞いてきたとします。そこで、あなたはデール・カーネギーの著書『人を動かす』を勧めたとしたならば、相手はどう思うでしょう。
小説の頭になっていた相手ならば、まず間違いなく「なんじゃいこのおっさんは!俺は小説を勧めてほしかったのに、なんでこんな意識高い本勧めてきたんだ!」と思うんじゃないでしょうか。下手すればお互いに二度と口を交わすことも無くなるでしょう。
たしかに『人を動かす』は累計1,500万部売り上げている自己啓発の名著であり、誰に勧めても恥ずかしくない本です。
それでも、勧めるべき人や場合、タイミングは選ぶべきです。
さっぱりしたラーメンを食べたい人をラーメン二郎には連れて行きませんし、黒髪清楚系女子高生が好きな人に明日花キララの動画は勧めないですよね。もしそんな人がいたとしたらシンプルなサイコパスです。小説を読みたい人に『人を動かす』を勧めるような人に人は動かせません。人を動かせないサイコパスです。
要するに、どれだけ名著であったとしても、どれだけあなたがお気に入りだったとしても、相手がすすめて欲しいものを汲み取った上でなければ、その本は相手にとってそ無価値なものになってしまうのです。せっかく自分が良いと思っている本を勧めるのですから、相手に合わせておすすめを選びたいものです。
ですから、「おすすめの本ある?」と聞かれた際には、どういう内容が読みたい気分なのか、どれくらいの分量が良いのか、実用書ならレベル感はどんなものがいいのか、どんな作家のどんな文体が好きなのか、最近ハマっていることは何かなどを尋ねてみて、相手が欲しているのはどんな本なのか丁寧に想像してみると、喜んでもらえるような本を勧めることができるんじゃないかと思います。
ちなみに僕は小説だったら、朝井リョウ、森見登美彦、山田詠美。文章の書き方であれば、樋口裕一、山田ズーニー。言葉の考え方であれば梅田悟司、谷山雅計、中村禎。短歌や詩は寺山修司、穂村弘。捻くれている人には中島義道(敬称略)の著書を勧める傾向があります。どれも読みやすいものが多いですし、だいたい僕の趣味は掴めるかと思います。
それではまた。