奈辺の日記

不確かなことを綴ります。

緊急病室にて


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なぜかベッドが足りなくて通された緊急用の病室。先客はいなくて、窓際のベッドだったからむしろゆったり過ごせそうで良かった。

 

次の日、僕は手術を控えているので、早めに眠りについた。

 

深夜、苦しそうな声を上げる女性が運び込まれてきた。まるで、断末魔の叫びとでも言うべきだろうか。どうやら直前に手術が終わったようだ。

 

しばらくすると、旦那さんが駆けつけてきた。不思議と心配している様子はなく、事務的な話やこれからどうしたら良いのかわからないという話をしていた。幼い子どもは母の変わり果てた様子に驚いていたようだが、彼なりに心配していた。

 

聞くに、この夫婦の経済状況は困窮しているらしく、旦那さんは身寄りの元を訪ねて医療費や生活費を貸してもらうために頭を下げて回っていたそうだ。

 

 

次に、咳がひどい少女が運び込まれてきた。話を聞くと、彼女は高校生で親元を離れて一人暮らしをしているらしい。友達がお見舞いに来ていた。

 

彼女はとてもしっかりしていて、看護師さんに自分の状況を丁寧に説明していた。

 

 

翌朝、ベッドが空いたということで僕は別の病室に移った。自分の手術のことを考えねばならぬという時に、他人様の人生に触れてしまったことは、間違いなく精神衛生上良くないと思う。というか、よく眠りにつけなかったので心身共に良くない。

 

一番最初に運び込まれてきた女性は自分の体のことで精一杯なのに、旦那は頼りない。

 

次に運び込まれてきた少女は、頼るべき家族が近くにいない。

 

一方、僕達はどうだろう。自分が自分のことしか考えられなくなってしまった時、頼れる存在がいることは、本当に恵まれていると思う。

 

悲しきかな人はある程度余裕があると、その状態に慣れてしまって自分が恵まれていることを忘れる。皮肉なことに、その余裕は自身の不足を補うことばかりに目を向けられる。

 

恵まれていることへの感謝を忘れないようにしようなんて、恵まれている人間に言われても綺麗事に思えたりする。

 

愚かな僕は、こうして自分とはかけ離れた人生に触れてはじめて、本当に大切なものに気づけるしれない。